一晩寝たら処女という話

先日、大学4年生の女の子とコーヒーを飲んだ。3年ぶりの再会だった。

久しぶりにあった彼女は、「ゼミの同期と話が合わない」と話した。「だって、みんな処女なんですよ」彼女は大学1年生から、高校の教師と不倫をしているらしい。この前も、飲み会であった男の人と、気が付けば、私、手をつないじゃって。だから、恋愛の話とか、全然合わないんですよ。と言う。

たぶん、気が合わないのは処女のせいじゃないよ。

えー、どうしてですか。だって処女ですよ。

あのさ、一晩寝るじゃん、そしたら処女膜って再生するんだよね。だから、朝起きたら私たちは等しく処女ってこと。

なんですかその話、と彼女は笑った。

「一晩寝たら処女膜が再生する」と言ったのは、大学時代の友人だった。彼女は女性経験のない男性と付き合っては別れ、付き合っては別れていた。相手の男性は引け目を感じないのか? という質問に彼女は独自の処女論を教えてくれた。

だから、ずっと朝起きたら処女でいれるってこと。おばあちゃんも処女だし、子どもを産んだ人だって処女。私も、君も、みんな処女ってことでよくない?

確かに、イエスキリストが処女から生まれたのもこの質問で納得がつく。いつだって、私たちは処女に戻れるのだった。

時々このことを思い出す。私は、いつも相手との違いを楽しめるほど、いつも優しくはいられない。処女じゃ処女じゃないか、大学行ってるか行ってないか、正社員か非正規社員か、結婚してるかしてないか。自分と他人との違いばかり探していると、「自分は普通とは違う、どうしょうもない人間」とか、「自分は普通とは違う、特別な人間」のように思うし、それはつまらないけど、抗いがたい。

でも、そのままだと、ずっと寂しい気持ちを抱えたまま生きていく気がして、時々友人の言葉を思い出しては、自分と相手との共通点を探すのは、大人の知恵なんじゃないかと考える。

だから、処女か処女じゃないかなんて大した問題じゃないんだよ。あと、ケーキ食べる? シフォンケーキうまいらしいよ、食べログでね、クリームがなんか特殊でおいしいって。よくわからんけど。私は手をあげ店員さんを呼んだ。

2017/02/10

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