本棚をつくる

午後から、大学時代の後輩の今ちゃんが家に来た。

「おお、いい感じっすねー」

と今ちゃんは新しい私の家についての感想を言った。「絵が飾っているのがいいっすねー」とか、目に付いたものを端から褒めてくれた。

作りかけの本棚づくりを手伝ってほしいとお願いしたら快諾してくれた。本棚になりかけている木材は、横になったEみたいな形でしばらく部屋を占領していた。友人の直江さんと途中まで組み立てていたが、過酷な作業で彼女の右腕がつったので、そのままにしていた。

木の板にボンドを塗って、垂直になるように手で支えてもらう。私は電動ドライバーで木ねじを入れ込んでいく。もう何日もやっているので、上達しているように感じる。最初はひとつのねじで5分くらいかかっていたけれど、今は10秒ほどかければすーっと入っていく。シナランバーコア(ファルカタ芯) 21mm。ねじが少し斜めに入ったなと思ったら、すぐに手元のレバーを切り替え、逆回転で抜き、もう一度まっすぐに入れなおす。

「プロフェッショナルとは、間違えないことではなく、すぐに間違えを修正できる技術のことなのだ」

と今ちゃんがナレーションを入れてくる。私もすっかりその気になる。

本棚は部屋の寸法をはかり、自分でデザインして、木取図を書いて発注して、組み立てた。計7個。大仕事だ。緻密に計算したはずだったが、大幅な計算ミスもあった。あまり気にしていない。組み立てたものを置いてみる。いい感じがした。「いい感じっすねー」と今ちゃんも言った。

そういえば、私が19歳だったころ、ひどいフラれ方をしたことがあった。あの時には、たしか今ちゃんと新宿紀伊国屋にいったあとに、カラオケにいって、今ちゃんが歌っているのを聞いて、なぜこの世には恋の歌ばかりあるのだと、私はさめざめと泣いた。チャットモンチーを歌ってた気がする。最近、5年ほど同棲した彼氏と別れた。しかしいまは、電動ドライバーで本棚をつくっている。たくましくなったものだ。

夕方には、友人の住本さんが合流した。沖縄料理屋からごはんをテイクアウトした。東京で食べたゴーヤーチャンプルーの中で一番美味しかった。

2020/11/22

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